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No.002
昨年の10月に弊社CGソフトの「Poser」や「Vue」で制作した作品の個展のご案内をいただき、世田谷美術館に足をはこばせていただきました。展示された作品を拝見し、高い芸術性とオリジナリティ溢れる独創性に大変驚かされました。そして、作者の方が78歳と聞いて二度ビックリ。それがAlbo HELM(アルボ・ヘルム)さんとの出会いでした。今回はヘルムさんをお招きして、コンピュータグラフィックを始めたきっかけや作品に対する想いなどについてお伺いしました。
(聞き手:BNN新社 西脇 イサオ)
プロフィール
Albo HELM氏
1928年生まれ、スイス人。グラフィックデザイナー。日本在住6年目。
アナログの時代からDTPの時代まで、グラフィックデザインの現場で活躍。
現役を離れた現在も、コンピュータアートの可能性を探求し続けている。
プロフェッショナルだけではなく、一般の人々にもコンピュータアートの楽しさを知ってもらいたいと、2年前から世田谷美術館にて個展を開催している。
本格的な3DCGが手軽に楽しめるとこころがよいですね
西脇:ヘルムさん、こんにちは。まずはこれまでのご経歴を教えていただけますか?
ヘルム:私はグラフィックデザイナーとしてポスターやカタログ、書籍などの商業印刷物に関するアートディレクションに長年にわたり関わってきました。手書きや切り貼りのアナログな時代からコンピュータによるデジタルデザインの時代まで、それぞれの時代の技術的な限界を極めた作品を作ることに力を注いできたと言えます。現在は現役を退いていますが、コンピュータやソフトウェアの能力的限界、そして自分のアイデアとの融合の可能性を探求しながらコンピュータアートの制作を楽しんでいます。
西脇:コンピュータグラフィックソフトを使い始めたきっかけはなんでしょう?
ヘルム:グラフィック雑誌で景観シミュレーションソフト「Bryce」のレビュー記事を読んだのがきっかけです。ユニークで簡単そうに思えたので購入して使ってみました。しかし実際に使ってみると独特で複雑なユーザーインターフェースになかなか馴染めず、操作性に不満がつのりました。そんな折り、やはり雑誌でVueのことを知り、すぐに購入しました。Vueのインターフェースはオーソドックスでとても使いやすいと感じ、その後はVueに乗り換えました。こうして景観シミュレーションソフトでCGアートの世界に足を踏み入れたのです。
西脇:Poserも同じような経緯で導入されたのですか?
ヘルム:そうですね。やはりレビュー記事で興味を持って購入しました。VueにしろPoserにしろ、本格的な3DCGが誰にでも楽しめるところがよいですね。
西脇:そうですね。どちらのソフトも買ってすぐにそれなりの絵を作れてしまいますし、経験を深めればヘルムさんのように非常に芸術性のある作品を生み出すことも可能ですし。
Poserの限界を試すように作品づくりしています
西脇:今回はPoserを使用した作品をお持ちいただきましたが、どの作品も顔のアップのポートレートですね。しかも女性の。
ヘルム:私は、女性が好きですから(笑)顔にフォーカスしているのは、「表情」というものにアート性を感じるからです。特に「目」には多様な表情を表すことができます。「目」の表現に様々な意味を持たせることによって、アーティスティックな作品を生み出したいと思ったのです。
西脇:確かにどの女性も大変魅力的な表情ですね。これらの女性フィギュアは、モーフィングデータなどのコンテンツを購入して作られているのでしょうか?
ヘルム:いいえ、これらの作品はすべてPoserに標準で収録されている女性フィギュアを自分で編集して作っています。Poserはその機能に非常に高い可能性を秘めているので、私としてはPoserだけでどこまでの表現ができるのか、その限界を試してみようと思いながら作品づくりをしています。
西脇:これらの女性にはモデルは存在するのでしょうか?
ヘルム:モデルは特にありません。作品を作る時には、「セクシー」とか「クール」などおおまかなテーマを設定して、実際にPoserで作業をしながら自分のイメージに近づけていく、という方法をとっています。
西脇:制作テクニックとしてポイントにしていることはありますか?
ヘルム:ライティングやアングルには気を配ってます。私は現実のモデルも多数撮影してきたので、その時の経験がCGによる作品にも大変役立っています。また、先ほどもお話したように「目」の表情づくりには注力しています。視線やまぶたの位置、ライティングによるハイライトの表現などですね。ほとんどの作業はPoserでおこなうのですが、こういった細部についてはAdobe Photoshopで若干の加工をしています。
西脇:なるほど。そういった細部への心配りが魅力的な表情を作るのですね。これらの女性はヘルムさんの好みがでているのでしょうか?
ヘルム:いえいえ、どの作品の女性も特に好きなわけではありません。女性の表情を通してアートを表現することが目的ですから。私は現実の女性のほうが好きですね(笑)
西脇:ごもっともです(笑)
個性や技術に応じて楽しめるCGセミナーを開きたい
西脇:それにしてもすばらしいポートレート作品ばかりなのですが、ヘルムさんはこれらの作品を通して、アートに興味があっても敷き居が高いと感じている一般の人々にアートを広めていく活動をしていらっしゃるとか。
ヘルム:はい、その活動の一環として2年前から世田谷美術館の区民ギャラリーで個展を開いています。欧米では職業や年齢に関係なく、幅広い層の人たちがコンピュータを活用してアートを楽しんでいますが、日本ではまだまだ少ないように感じます。私は日本でも、もっと多くの人にアートを広めていきたいのです。そして、特に中高年の方にこそ、CGでアート作品を作ってもらいたいと思います。中高年の方には時間や経済に余裕がある方が多いですし、これまでの個展を通してお話した中高年の方は皆、何か新しいものを身に付けたいという意欲が旺盛だと感じました。CGなららば実際に絵筆を使うよりも手軽に楽しめるはずですし。
西脇:今後はCGアートの教室みたいなものを考えられていらっしゃるのでしょうか?
ヘルム:いままでの2回の個展を通して、「ぜひどうやって作るかを知りたい」という声をたくさんいただきました。ご覧になったみなさんは、私のような年齢のものでもできるのなら自分も出来るかも知れない、と思ったのかもしれませんね(笑)なので、これからは作品に触れてもらうだけではなく、実際の制作方法を知ってもらうような活動もしていきたいと考えています。教科書的なやり方ではなく、一人一人の個性や技術に応じた作品づくりを楽しんでもらえるようなセミナーを開きたいですね。
とても78歳とは思えない若々しさとバイタリティーで、CGアートの可能性を探求し続けているヘルムさんとお話させていただいて、こんな風に楽しんで生きていける人生ってすてきだなあ、と心から思いました。CGアートを広めるための活動には、ぜひ弊社も協力させていただきたいと思います。
最近のヘルムさんはPoserよりもVueによる作品づくりに力を入れているとのことなので、近いうちにVueの作品もお話を伺わせていただきたいと思います。