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第3回「Poserは3D世界のDTP的ツールだ」
本連載も3回目となり最終回である。今回はこれまでのまとめの意味も含めてPoserというソフトウェアの中核に迫ってみたい。
Macテクノロジー研究所:松田純一
http://www.mactechlab.jp/
【略歴】1948年東京生まれ。東証一部上場の大日精化工業株式会社ならびに貿易商社勤務を経て1989年3月Macintosh専門のソフトハ ウスである株式会社コーシングラフィックシステムズを設立し代表取締役に就任。 株式会社コーシングラフィックシステムズは「ColorMagician II」「VideoMagician II」「たまづさ」「グラン・ミュゼ」 「MOMENTO」「QTJOY」「PowerKeeper」「MoviePaint」「QTアルバム」「CutieMascot」などなどMacライクなソフトウェアを開発し多くのユーザーならびに市場からの支持を得る。 例えばアニメーションソフト「MoviePaint」はPerformaへのバンドルも含め、総本数は40万セット以上の販売数を記録す る。そして約14年の間、アップルコンピュータ社のトップデベロッパとしてMacintoshとそのソフトウェアの普及に寄与する。 |
Poserは3Dのオモチャか?
筆者のささやかな影響で知人のひとりがPoserを始めた。その彼が先日「Poserなんてオモチャだ。3Dやるならモデリングからやらなきゃ...」と言われたとかで気落ちしていた...。
しかし、この種の話をいまだに根強く信じている人たちがいるのも笑える。無論モデリングという3Dの形状作りから3Dグラフィックを楽しむユーザーを否定するものではないし、それはそれで素敵なことだ。しかし3Dはモデリングをやらなければダメとするような陳腐な意見は到底受け入れられない。
確かにPoserはユーザーのイメージシーンに合う舞台、すなわち風景や建物あるいは街並みや小物、3Dフィギュアなどを配置し、適切なカメラアングルと照明を考えた上でレンダリングすればリアルな表現が可能となる。したがってある種の「3Dクリップアート」といった感覚を持つこともうなづける。
無論レンダリングは静止画イメージだけでなくアニメーションも可能で、街並みや建物の中に人物を歩かせたりすることもできる。
どうやらPoserは"有りものを置くだけ"で(本来は違うが)3Dツールとしては簡便であり、ユーザーは工夫の余地もなく、さらに自分でオブジェクトを作るわけでもないから低レベルの遊びに過ぎない...と思っている人がいるらしい。
はっきり言えること、それはダウンロード販売されている3Dオブジェクトのすべてが優れているわけではないものの、プロが作っているものも多い。したがってそれらの完成度は高く、私などがそれに近いモデリングを試みるとすれば膨大な時間を必要とするだろう。そして物事は時間をかければ誰でも十分なものが出来上がるほど容易ではない。
筆者も根気と時間があった時代には当時の非力なMacintoshとさまざまな3Dソフトウェアを使ってモデリングを試みたものだが、現在はプロフェッショナルたちが創ったモデルと同じようなものを一から作り出そうとは思はない。何しろ完成度の高い作品がすでにそこに多々存在するのだから...。
一部のプロフェッショナルたちが業務として作品作りに立ち向かう場合はともかく、一般的にはそこに優れた素材があるのに同様なものをゼロから苦労して創り出す必要もないだろう。
どうしてもイメージに合わない、あるいは思うようなモノがない場合に自身で創ることを考えればよいのではないか。
したがってモデリングをやらなければ3Dではないとか、低俗だということなど決して当てはまらないし、どのようなアプローチであろうと作品作りそのことが重要なのだ。
Poserは3D世界のDTPとなる?
すでにDTP(デスクトップ・パブリッシング)は印刷業界でもごく当たり前のことであり、珍しいことではなくなったが、筆者はPoserこそ「3D界のDTPシステムになりうるのでは?」と考えている。無論比喩ではあるが...。
それはDTPが二次元スペースにテキストや写真あるいは図版を配置して文書をレイアウトするのと同じく、Poserは三次元空間に作者のイメージにあったオブジェクトなどを配置することでひとつのシーンを作り上げることができるからだ。しかしDTPも闇雲に紙面作りをすれば、陳腐な結果となるようにPoserもただ単にオブジェクトを並べて配置するだけでは決して作品とはなり得ない。
優れたDTP作りにはそれなりの技術とセンスが必要なように、Poserによる作品作りを目指すなら、日々自然や日常のあれこれを観察する眼を持つことが重要になってくる。
【Poserによる巨大な建物の中に人物をレイアウトし、アングルを決めてその一部をレンダリングした一例。そのオペレーションはなにやら三次元のDTP感覚だとも言えるかも知れない。】 |
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例えば建物や木々の大きさの把握、草花はどのような場所にどのように生えるか、人の顔は心象とどのように関係するか...等々を常々考え把握しておく必要がある。
DTPがそれまで下書き、レイアウト、デザイン、印刷といったそれぞれの専任者による業務を1人のオペレーターで可能としたように、Poserでは通常プロデュース、キャスティング、スタイリスト、照明、演出、撮影、記録といった全ての作業とプロセスを1人でやらなければならない。それは大きなメリットでもあるが、それらすべての作業や任務にある程度精通すべく努力が不可欠になることを忘れてはならない。
PoserとVueとの連携は一番の理想
さて、Poser紹介の場としては逆説的に思えるかも知れないが、よりよい作品作りを目指すなら、Poserだけに執着すべきでないことも強調しておきたい。
これまでにも記したようにPoserは、よりよいデジタルスタジオになりうる。しかしながらそのスタジオに小道具や大道具あるいはバックドロップなどを配してモデル(3Dフィギュアや静物)の撮影をするには大変適しているものの、例えて言うなら狭いスタジオ内に大自然を創り出そうとするなら無理が生じる場合も多い。
そうした際にはイーフロンティア社が別途扱っているVueシリーズをPoserと併用することを是非お勧めする。
Vueはパーソナルコンピュータ向け「3D景観作成ソフト」としては最高峰のツールであり、空や大気の様子までをもシミュレートでき、山々に木々を植えたり雪を積もらせたりと、大自然のリアルな景観を創り出すことに秀でている。
別途機会があればこのVueについてもお話ししたいが、多くのオブジェクトの配置もVueは大変こなしやすい。
PoserとVueとの連携には問題がないではないが、筆者は日々人物を含めた大道具や小道具をPoserで構成し、それをVue 5 Infinite 上に配置・演出することで3Dシーンを創り出している。
Poser用コンテンツは商用利用もOK
最後にPoser用コンテンツの使用権やその著作権にかかわるお話しをして本稿を閉めたいと思う。
コンテンツパラダイスをはじめとして、ユーザーが購入したコンテンツの使用に関わる注意と制限などについてはコンテンツに同梱されている"Read Me"ファイルを一読する必要がある。しかしその記述は英語であり、耳慣れない法律用語だったりとなかなか読む気にさせないものだ(笑)。だが、特殊なものを除けばそのほとんどは著作権者を明確にすると共にデジタルコンテンツをそのまま配布・再販売することを禁じているものの、一般的な商用利用に関しては許諾しているものがほとんどだ。無論そうでなければコンテンツ販売の意味がない。
筆者は各コンテンツ著作権者の代弁をするものではないし、筆者が保証できることではないが、一般的にはユーザーがコンテンツを利用して創った作品を印刷物や作品として配布や販売することに問題はないと考えてよいだろう。しかし著作権や使用権に関することは権利者にとっても利用者にとってもデリケートで大切な問題だけに、コンテンツ販売サイトではよりユーザーに分かりやすい環境を提供すべきだと考える。
筆者が聞いている範囲では、イーフロンティア社はユーザビリティの向上を目指すという意味からも著作権がらみの表記を含め、分かりやすいコンテンツの提供を進める意向があるという。是非著作権者の権利を守りながらも、よりユーザーの利便性を図るシステム作りに一層の努力をしていだくよう強くお願いして筆をおくことにしたい。
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