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趣味もビジネスもPoserで!
第1回「Poserとそのコンテンツは優秀な画材であり資料だ!」
今回から3回連続でこれからPoserを始めたいと考えている皆様を対象に、趣味からビジネスまでへの幅広い活用の可能性とその魅力をご紹介する。
Poserは「究極の3Dキャラクターデザイン&アニメーションツール」と銘うっているソフトウェアだが、もともと開発者LARRY WEINBERG氏のアイデアとしては、自身が絵を描くとき、人物のポーズを習得するための木製人形の代わりだったという。
Poser 1.0は1995年にリリースされたが、当時のパソコンは非力だったことも影響し、文字通りシンプルなキャラクタにポーズを取らせるツールでしかなかった。しかしその後、Poserの進化とパソコンのパワーアップにより、Poserは大きく活用の場を広げ、単なるポーズツールの枠を超え、プレゼンテーション、美術、演劇、医学、広告、そして一般ビジネスなどなど幅広い使われ方をするようになった。
ただし、これからPoserを使ってみようとする方々にとって、あまりに多面的な機能を持つPoserは誤解しやすいソフトウェアなのかも知れない。
Macテクノロジー研究所:松田純一
http://www.mactechlab.jp/
【略歴】1948年東京生まれ。東証一部上場の大日精化工業株式会社ならびに貿易商社勤務を経て1989年3月Macintosh専門のソフトハ ウスである株式会社コーシングラフィックシステムズを設立し代表取締役に就任。 株式会社コーシングラフィックシステムズは「ColorMagician II」「VideoMagician II」「たまづさ」「グラン・ミュゼ」 「MOMENTO」「QTJOY」「PowerKeeper」「MoviePaint」「QTアルバム」「CutieMascot」などなどMacライクなソフトウェアを開発し多くのユーザーならびに市場からの支持を得る。 例えばアニメーションソフト「MoviePaint」はPerformaへのバンドルも含め、総本数は40万セット以上の販売数を記録す る。そして約14年の間、アップルコンピュータ社のトップデベロッパとしてMacintoshとそのソフトウェアの普及に寄与する。 |
Poserはオタク系3Dソフトウェアではない
まず誤解の第一は「Poserはオタク系3Dソフトウェア」という面が目立ってしまう点にある(笑)。
例えば「3Dの美少女フィギュアを操って好みの着せ替えを楽しむ...」といったイメージが先行しているのかも知れない。確かにPoser用のコンテンツを販売しているサイトの多くにはヌード同然のコンテンツやビジュアルも多い。
筆者はそうした楽しみ方を否定するものではないが、その傾向はPoserが表現豊かで優秀な3Dソフトウェアである一面を証明するものだと考えている。しかし、決してオタク系の専用ソフトウェアではないことも明言しておきたい。
3Dソフトウェアは一般的に三次元立体の形状データを扱い、モデリングと呼ぶ形状データの作成、物体の面に陰影を付けて立体的でリアルな表現を行うシェーディング、そして形状データから立体的な表示画像を計算し、リアルな画面を生成するレンダリングと呼ぶ作業を経る。だからこそ「Poserは3Dレンダリングしなければ完結しない」という解釈もあるし、3Dによる作品やアニメーションなどは自分には縁がないと思い込んでいる方も多い。
ここでは逆説的ではあるものの、Poserは単に3D作品を作ったり、3Dアニメーションを作るだけのツールではないということを強調しておきたい。
Poserは絵画やイラストレーションを学ぶ最良のツール
筆者は常々「Poserは最良の画材である」と考えているし、写真と見まごうリアリティ豊かなシーンを創り出すことが出来るこのツールを、絵画やイラストレーションを学ぶ画材としてもっと活用すべきだと思っている。
もともとPoserにはリアルなレンダリング処理だけでなく、スケッチデザインレンダラーという機能が搭載されている。これはその名の通り、3Dによるシーンをモノクロあるいはカラーによるペン、鉛筆、ブラシ、パステル、水彩絵の具などといった質感で描写する機能である。
【Poserによるスケッチデザイナー機能はインスピレーションを得るツールとして活用したい】 | 【スケッチデザインレンダラーにより、3Dデータを手描き風に仕上げた例】 |
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ただしこれまた誤解があっては困るが、3Dオブジェクトを単にスケッチデザインレンダラーといった機能を通せば、それで優秀な作品が出来上がるということではない。あくまで表現としてのシミュレーションだと考えるべきだろう。そしてより高度な画像処理効果を期待するなら、別途PhotoshopとかStudio Artistのような画像編集を専門とするソフトウェアを使ってもよいだろう。
そもそも3Dデータならずとも、写真を "絵画に写し取る" ことにある種の "テクニック放棄" といった罪悪感を感じる人もいるようだが、それは誤りだ。
あのフランス印象派の巨匠、エドガー・ドガは積極的に写真を絵画の下図として活用していた一人だ。他にもクールベ、マネ、ドラクロアなどもそうした作品を残しているという。
写真を下図に使う目的の第一は正確な遠近法を学ぶためにも有効だった。17世紀のオランダ画家ヤン・フェルメールは、現代のような写真機が発明される以前のカメラ・オブスクラというある種の針穴写真機を使い、風景を絵の下図として写していた。 しかし、ドガやフェルメールが写真に惹かれたのは正確な下図を得るためだけでなく、光と影の一瞬をいかに描写・表現するかといった手段であったようだし、投影像をそのまま使うだけでなく、自身のインスピレーションを得るためであった。またポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルは積極的に自身で撮った写真を作品に利用したことは良く知られている。
だからと言うわけではないが、私たちも臆することなくPoserとそのコンテンツを最良の画材・資料として、表現手段を学ぶツールとすべきではないだろうか。
Poserのドキュメントウィンドウは貴方専用のアトリエ
実際に絵を学んだ人ならデッサンの重要性については十分ご承知のことだと思う。筆者も学校の美術室にあったミケランジェロのダビデ像やトルソーを数え切れないほどデッサンした思い出があるが、それら石膏像の光と影を画用紙上に写すことは容易いことではない。ただただ観察眼を養いつつ、何度も何度も練習するしかない。無論デッサンにはモデルとその場所が必要だが、Poserならお気に入りのフィギュアや静物あるいは草花などのオブジェクトデータを置き、照明を好みの角度から当て、光りと影が織りなす微妙な関係をリアルに学習できる。また対象を正面からでも横からでもあらゆる角度から眺めることができるだけでなく、何よりも時間と場所に縛られることなくいつでも活用できる点が嬉しい。
さらに例えばヨーロッパの街並みとか、洋館の室内を描きたいと考えたとき、私たちの何人が実物や写真を見ずしてそれらを描くことができるだろうか。
【Poserによる3Dレンダリング室内例。そこにモデルを座らせるか静物を置くか、あるいは花を生けるかは貴方の自由だ】 | 【Poserによる街並みのレンダリング例。スケッチブックを持って写生に出かけたくなるリアルさではないか...】 |
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いや、建物だけでなく木々の枝振りや質感、小動物や静物一般などなどに至るまで、Poserの世界にはすべてとは言わないまでも、プロフェッショナルたちが提供してくれる大変リアルで実写の写真同様、資料としても活用できるオブジェクトデータがそれこそ豊富に揃っている。それらを使えば、絵を描く以前にイメージに合うバーチャルな風景・世界を自身で創り出すことができるわけだが、ここでは是非レンダリングに留まらずにもっとPoserのリアルな世界を "下絵に利用する"、"写生する"、"絵にする" 楽しみをお勧めしたいと思う。
絵やイラストを学ぶ人たちにとって、Poserはまさしく貴方専用の自在なアトリエなのだ。
【参考文献】飯沢耕太郎著「写真美術館へようこそ」講談社現代新書
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